中小企業がWeb制作会社にホームページの制作を依頼すると、『オリジナルテーマで作りませんか?』といった提案を受けることがよくあります。
『他にはない、特別なデザインで他社と差をつけましょう』といった言葉を聞くと、思わず魅力を感じてしまう方も多いかもしれません。
しかし、その“オリジナルテーマ”という提案、実は制作会社側の囲い込み戦略かもしれないのです。
私は以前勤めていた会社で、自社サイトや情報発信サイトの立ち上げ・運営を担当していました。
そうした現場の中で、オリジナルテーマが使われているホームページの“扱いにくさ”や、“特定の担当者にしかわからない構造”によるリスクを感じる場面が何度もありました。
こうした経験を通じて、一見魅力的に映る“オリジナルテーマ”が、実は発注者を縛るための仕組みとして使われているのではないか——そんな疑問を持つようになったのです。
今回は、『なぜ中小企業のホームページにオリジナルテーマが多いのか?』という素朴な疑問を出発点に、制作会社の思惑、そして発注側が事前に知っておくべき注意点について、わかりやすく解説していきます。
WordPressのオリジナルテーマとは何か?その役割と仕組み
まずは前提として、WordPressにおける『オリジナルテーマ』とは何を指すのでしょうか。
WordPressには、あらかじめ用意された無料のデフォルトテーマのほか、無料・有料の汎用テーマ(いわゆるテンプレート)も多数存在しており、それらをベースにデザインや機能を整えてホームページを作るのが一般的です。
一方で『オリジナルテーマ』とは、そうした既存のテーマを使わず、制作者がゼロからコードを組み、個別に設計・開発したテーマのことを指します。HTMLやCSS、PHP、JavaScriptといったプログラムを使って作られるため、見た目も中身も完全にオリジナルな構成になります。
このようなオリジナルテーマを導入することで、『他社とは違うデザインにしたい』『ブランディングを強化したい』といった要望に応えられる——といったことが、制作会社の提案時によく語られる“メリット”です。
制作会社がオリジナルテーマを勧める本当の理由とは?

では、なぜ多くの制作会社は中小企業にオリジナルテーマを提案するのでしょうか。
その理由は、必ずしも『クライアントのため』だけとは限りません。むしろ『制作会社側の都合』が背景にあると私は感じています。
1. クライアントが制作会社に依存する構造を作れる
オリジナルテーマで構築されたサイトは制作者独自の設計になっていることが多く、第三者が手を加えるのが非常に難しいケースが少なくありません。
仮に他の制作会社がそのサイトを引き継ごうとしても、コードの全体像が把握できなかったり、管理画面からの編集が制限されていたりと、対応が困難な状況に陥ります。
その結果、ちょっとした文章の修正や画像の差し替えであっても、結局は元の制作会社に依頼せざるを得なくなり、そのたびに費用が発生する――そんな“依存関係”が自然とできあがってしまうのです。
2. 制作後も“売上を生む”仕組みとして機能する
こうしたオリジナルテーマは一度納品したら終わりではなく、『修正』『トラブル対応』『保守契約』『バージョンアップ対応』など、継続的な売上を生み出す仕組みとしても利用されます。
もちろん、すべての制作会社が意図的に囲い込みを狙っているとは限りません。ただ、オリジナルテーマを用いた設計が、結果としてクライアント側の選択肢を奪い、依存構造を生んでいるのは事実です。
私の偏見もあるかもしれませんが、これまでの経験をふまえると、オリジナルテーマの提案には『囲い込み』としての側面が含まれているように見えてなりません。
自社HPにオリジナルテーマを導入する具体的なリスク

では、実際にオリジナルテーマを導入したことでどのような問題が発生するのでしょうか。
中小企業にとって無視できないリスクをいくつか紹介します。
1. 管理画面から操作できない
一般的なWordPressのテーマであれば、管理画面からテキストや画像の変更、ページの追加・削除などが直感的に行えるようになっています。
ところが、オリジナルテーマの中にはこれらの機能が制限されていたり、特定のテンプレート(PHP)にコードが直接埋め込まれていたりするケースもあります。
その結果、運営担当者がちょっとしたお知らせを更新するだけでも、『制作会社に依頼しないと触れない』という状況になってしまうのです。
2. 他社に相談しても対応してもらえない
『今の制作会社に頼りたくない』『料金が高すぎる』と感じて別の会社に相談したとします。ところが、その制作会社独自のテーマであるがゆえに、他社が『うちでは対応できません』と断るケースが実際にあるんです。
この時点で、選択肢が限られているという事実に直面することになります。
3. WordPressやプラグインの更新が難しくなる
WordPress本体やプラグインは、セキュリティや機能の改善のために定期的なアップデートが行われます。
しかし、オリジナルテーマが入っているサイトでは、『アップデートで不具合が起きるかもしれない』『動作保証ができない』といった理由で、更新をためらわざるを得ない状況に陥ることがあります。
結果として、サイトが古い状態のまま放置され、セキュリティリスクが高まったり、新しい機能を使えなくなったりするのです。
4. 保守費用が年々増える
最初はリーズナブルに見えた保守契約も、オリジナルテーマでの運用が続くうちに年々コストが増えていく傾向があります。
『〇〇の対応はオプションになります』『アップデート作業は別料金です』といった形で、ちょっとした対応にも費用が発生する仕組みが構築されていることも。
本来であれば社内で対応できたはずの更新作業も、制作会社に都度依頼しなければならず、ランニングコストが思った以上に膨らんでしまうリスクがあります。
なぜ中小企業はオリジナルテーマを選んでしまうのか?
ここまで紹介してきたように、オリジナルテーマには多くのリスクがあります。それでもなお、中小企業のホームページ制作において、オリジナルテーマを採用する事例は後を絶ちません。
その背景には、いくつかの“思い込み”や“認識のズレ”が存在していると感じています。
1. 『特別感』が魅力的に見える
Web制作会社の中には、営業の段階で『オリジナルデザインで世界に一つだけのサイトを作りましょう!』といった提案をしてくるところがあります。
この言葉は非常に耳ざわりがよく、特にWeb制作に詳しくない事業者ほど、『それなら安心だ』『他社と差をつけられそうだ』と感じてしまいがちです。
確かに、“オリジナル”という言葉には、どこか特別で魅力的な響きがあります。
しかし、よく考えてみれば、クライアントが求めているのは『情報がわかりやすく伝わること』『問い合わせしやすいこと』『更新しやすいこと』であり、必ずしも“見た目の特別さ”ではないはずです。
2. 制作会社の説明が専門的で判断が難しい
もう一つの理由として、制作会社からの説明が専門的すぎて、発注する側が内容をよく理解できないという問題があります。
たとえば、『この構成は最新のフレームワークを使っています』とか、『コーディングでゼロから作ったほうが柔軟に対応できます』といった技術的な言葉を聞くと、『なんだかすごそうだ』と納得してしまい、そのまま契約してしまうケースが少なくありません。
でも本来なら、『このサイトを誰が運用していくのか?』『将来的に自社で更新できるのか?』といった実際の使いやすさや運用体制こそ、しっかり考えるべきポイントです。
ところが、提案段階ではそうした視点が抜け落ちてしまい、『専門用語に押し切られて決めてしまった』という流れになりがちなのです。
既存テーマのHPでも十分に“オリジナリティ”は出せる
では、オリジナルテーマを選ばなければ、独自性のあるホームページは作れないのでしょうか?
答えは『いいえ』です。
現在のWordPressには非常に高機能な既存テーマが多数存在しており、それらをベースにしながら十分にブランドイメージを反映したサイトを構築することが可能です。
1. 色・レイアウト・画像・フォントの調整で個性は出せる
既存のテーマは、あらかじめ基本のレイアウトやパーツが用意されていますが、それらは決して“決められた形”に縛られるものではありません。
テーマによってはカスタマイズ性が非常に高く、たとえば以下のような調整が可能です。
- ブランドカラーに合わせた配色の変更
- コンテンツの構成順の入れ替え
- フォントの種類やサイズの調整
- ヘッダー・フッターのデザイン変更
- トップページのヒーロー画像やスライダーの導入
こうした工夫を組み合わせることで、『テンプレート感』のない“自社らしさ”をしっかり表現したホームページを作ることができます。
2. 他社でも対応できる=安心して続けられる
既存のテーマやオープンな構成を使えば、万が一今の制作会社と契約を終了したい場合でも、他社へスムーズに移行することが可能です。
汎用性の高い構成であれば、他社の担当者も内容をすぐに理解できるため、トラブル対応や更新作業がしやすくなります。
これは、中小企業がホームページを長く・無理なく・安心して運用していくうえで、非常に大切なポイントといえるでしょう。
まとめ:中小企業のHPはオリジナルより“使いやすさ”を優先すべき
ホームページは『納品して終わり』ではなく、事業とともに育てていくものです。
だからこそ、初期段階で“制作会社の都合”に縛られない構造を選ぶことが大切です。
- なぜオリジナルテーマを勧められているのか?
- それは本当に自社に必要な仕様なのか?
- 将来、自分たちで運用できるのか?
こうした視点を持てば、制作会社の『囲い込み』に巻き込まれるリスクを減らすことができます。
私の経験から言えるのは、多くの中小企業にとってオリジナルテーマは不要ということです。
“特別感”よりも、使いやすく、誰でも引き継げる構成を選ぶほうが、長く安心して運用できるためです。
Web制作会社から『オリジナルで作りましょう』と言われたときは、その意図を冷静に見極めてください。
会社ホームページの制作・リニューアル、まずはお気軽にご相談を
Webサイトは事業の信頼性を高め、集客や採用にもつながる“企業の顔”です。
『そろそろホームページを整えたい』『運用しにくさを解消したい』と感じている方は、ぜひ一度ご相談ください。
私の制作サービスでは、見た目だけでなく、運用のしやすさ・情報更新のしやすさを大切にしています。
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